退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

「大隅良典さん、ノーベル医学・生理学賞を受賞」のニュースで思ったこと

スウェーデンカロリンスカ研究所は3日、今年のノーベル医学・生理学賞を大隅良典・東京工業大栄誉教授に授与すると発表した。細胞内で細胞成分を分解し再利用する「オートファジー(Autophagy)」の仕組みを解明したことが受賞理由とのこと。

東工大で行われた記者会見がネットで中継されていたので作業をしながら見ていた。トレードマークのヒゲがかっこいい。いかにも「博士」というイメージのルックスだ。

さて、かつては日本からノーベル賞受賞者が出ると天下の一大事だった。昭和のある年、日本人がノーベル化学賞を受賞したために、化学専攻を志望する人が激増して大学受験に影響がでたことがあり、周辺でもさまざまな悲喜劇が起こったのもいい思い出だ。

しかし2000年代になり自然科学の分野で日本人受賞者が次々に出るようになった。今回の受賞についても3年連続となる。これだけ日本人がノーベル賞をとるのは素晴らしいことで、科学技術立国を標榜する日本の面目躍如というところだ。

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ここまで多くの受賞者が出るということは、個人の資質もさることならが、ある時期の日本の研究環境や教育が素晴らしかったという証左ともいってもいいだろう。まあノーベル賞だけが物差しでいいのかという議論があるだろうが、ある意味で黄金期だったことはまちがいないだろう。

ノーベル賞は直近の実績で決まるのではなく、業績から30年から40年後に受賞する事例が多いという。大隅さんの場合は、1967年に東京大学教養学部を卒業しているので、60年代から90年代ぐらいまでの研究環境、そして教育が大きく影響していると考えられる。だから「その時期の日本はすごかった」ということは言えるのだろう。

しかし今後もこのペースでノーベル賞受賞者を出すことができるのだろうかと考えると暗い気持ちになる。記者会見でも大隅さんが現在の研究環境の変化について懸念を述べていたが、おそらくある時期から日本の暗黒時代が来そうな予感してならない。

20年後、30年後はどうなるのか大いに気になるが、そのころ慌てても手遅れとならないことを祈るだけである。

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