新文芸坐で開催中の《平山秀幸映画屋〈カツドウヤ〉街道40年記念祭り》で映画『魔界転生』(2003年、監督:平山秀幸)を鑑賞。原作は山田風太郎の伝奇小説。
島原の乱で敗死したはずの天草四郎時貞(窪塚洋介)が復活し、野心家の尾張藩主・徳川頼宣(杉本哲太)を挑発して天下騒乱を画策する。秘術で荒木又右衛門(加藤雅也)、宮本武蔵(長塚京三)、宝蔵院胤瞬(古田新太)を現世に蘇らせて、魔界衆として仲間に加えて、柳生十兵衛(佐藤浩市)らに差し向ける。十兵衛は魔界衆を次々に破り、ついに江戸城で魔界衆に墜ちた父・柳生但馬守(中村嘉葎雄)と対決する。
こうした話なのだが、どうしても深作欣二監督版(1981年)と比べてしまう。私がチバちゃんファンだということを差し引いても本作はずいぶんと見劣りがする。酷かもしれないが、深作版を十分に研究したはずなのに、どうしてこうなったのか聞いてみたい。
この映画のダメなところを指摘するとキリがないので、ちょっといいなと思ったことを3つ紹介したい。
ひとつは島原の乱の戦闘シーンが映像化されていること。前作では戦が終わったあとの情景とナレーションで済まされていたが、本作では戦闘シーンがなかなかのスペクタクルとして描かれていて一見の価値はある。
ふたつめは映像技術の進歩。とくにデジタル技術の進歩のおかげで前作では目にすることができなかったシーンが映像化されている。印象に残ったのは江戸城の天守に十字の亀裂が入る場面。このシーンを映画館の音響のなか大画面で見れたのは収穫だった。ただ、天草四郎がこれだけの力を持っているなら、魔界衆は不要なのではないか思ってしまったが……。
みっつめは、天草四郎を演じた窪塚洋介。前作で四郎を演じていた沢田研二は年を取りすぎていると思っていたので、演技には賛否があるだろうが若手の窪塚洋介がキャスティングされたのはよかった。史実では四郎は10代半ばの少年だったというから、もっと若くてもいいのかもしれない。
最後にこの映画はどうすればよかったのか考えてみた。もろもろダメで救いようがないのだが起死回生の一手があるとすれば、原作に多分に盛り込まれた性的描写だっただろう。有名女優が脱いで話題をつくれば少しは違ったかもしれないし、作品に厚みが出ただろう。女優陣は、麻生久美子、黒谷友香、吹石一恵が配されていたが、今となってみればだれか「体あたりの演技」を披露してくれていたらと思うばかりだ。
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