退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

「アマゾン読み放題炎上」で思ったこと

講談社が10月3日に、アマゾン社が8月3日にスタートした電子書籍の定額読み放題サービス「Kindle Unlimited」において、配信していた1000タイトル以上の書籍や雑誌すべてが一方的に削除されたことを発表した。私がこの騒ぎを知ったのは、以下の「ねとらぼ」の記事からである。

nlab.itmedia.co.jp

講談社が発表した文書によれば、講談社がアマゾン社の読み放題サービス「Kindle Unlimited」に提供していたコンテンツをアマゾン社が事前の連絡なしに配信停止し、これに対し講談社が抗議し、さらに削除したコンテンツの復帰を要求している。

これを読んでまず思ったのは、二社間の取引き上のトラブルに関して相手を公の場で抗議する必要があるのだろうという疑問である。契約上出るところに出ても勝ち目がないということだろうが、大手出版社ともあろうものがずいぶん子どもっぽいことするんだなと思った。

このトラブルの背景に何があったのかと思っていたが、東洋経済オンラインの記事で概要が把握できた。

toyokeizai.net

この記事によれば、「今回の上乗せ契約では、ダウンロード後の書籍や雑誌の1割以上が読まれた場合、1冊まるごと読まれたのと同じ収益を出版社に支払うことになっていた。」とのこと。要はアマゾン社側の予算オーバーのため、これ以上読まれたたら困るということらしい。一方的なアマゾン社の都合である。

しかし契約において生殺与奪の権利がアマゾン社にあるとすれば、それは容赦なく行使して利益を守るというのがビジネスだろう。ビジネス慣習に反するなどと言っても弱肉強食の世界では虚しく響くだけだ。

アマゾン社に「文句あるならリアル本の取り扱いも止めるけどけど」と言われて、講談社が「ぐぬぬ」となるだけだろう。いまやアマゾン社の支配力はそこまで強くなった。

言い換えれば、「アマゾン社の本棚に並べる本はアマゾン社が決める」という当たり前のことが実践されたということかもしれない。それがいやなら講談社は自分の本棚を持つように努力すべきだったろう。「時既に遅し」だが……。それができないなら文句いうなと言われても仕方がない。

アマゾン社と出版社の関係は上のとおりだが、ユーザーとアマゾン社の関係を考えるとアマゾン社は今回完全に失敗している。電子書籍の定額読み放題サービス「Kindle Unlimited」をユーザーに定着すべき時期なのに、読みたい本からどんどん削除していくのだがら、ユーザーは満足するわけがない。長期的にみればアマゾン社の選択は裏目に出るだろう。

ここで不思議なのは海外で多くの経験を積んでいるアマゾン社がなぜこうもつまらないミスをするのだろうということだ。単に「上乗せ契約」のパラメータ設定を誤ったのか、それとも日本市場固有の問題があったのか気になるところである。

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