ユーロスペースで開催中の《生誕100年 小林正樹映画祭 反骨の美学》で、映画『からみ合い』(1962年)を鑑賞。
先日、世田谷文学館の「生誕100年 映画監督・小林正樹」展を見て以来、気になっていた作品だが、DVDになっていないので渋谷まで足を伸ばす。
余命3か月を宣告された大企業の社長(山村聡)の遺産をめぐる人間の赤裸々な欲望を描くサスペンス映画。社長は死に臨み、自分のかくし子を探すように部下たちに命じる。秘書課長(千秋実)、秘書のやす子(岸恵子)、顧問弁護士(宮口精二)、弁護士助手(仲代達矢)、そして社長婦人(渡辺美佐子)が権謀術数をめぐらせ遺産を巡って争う。
秘書の岸恵子が遺産を独り占めするどんでん返しは、意外性もありサスペンスとして面白い。しかし岸恵子はたしかに美人なのだが、汚れ役に徹しきれておらずに不満が残る。
秘書が、余命いくばくもない社長に強姦されるあたりから自らの欲望を露わにしていくのが見どころなのだろうが、この作品では色気というか悪女ぶりがあまり伝わってこない。強姦されたり全裸で部屋を歩かされたりする場面があるが、当時の清純派にとってはNGだったのか控えめな描写にとどまっているのも残念。
ややこしいストーリーをよくまとめた脚本は見事だし、武満徹による軽妙なジャズも映像に合っていてサスペンス映画としては秀作と言ってよいが、惜しい作品とも言える。
それにしもて山村聡は好色なワンマン社長の役が多いなぁ。
****(追記)DVDが発売されました ****
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