退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『星くず兄弟の伝説』(1985) / 80年代の雰囲気を色濃く伝えるカルトなSFロック・ミュージカル映画

テアトル新宿で開催中の《「観ずに死ねるか!傑作音楽シネマ88」出版記念上映会》で映画『星くず兄弟の伝説』(1985年、監督:手塚眞)を鑑賞。なんとスターダスト・ブラザーズ&手塚眞近田春夫がゲスト出演するトークショー付きで上映されるオレ的神企画。

星くず兄弟の伝説 [DVD]

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ぎりぎりまで新宿に行けるかわからなかったので、当日の夕方、劇場で当日券を買った。「どうせガラガラだろう」と甘く考えていたが、席を選ぶときにすでに8割ほど席が埋まっていた。軽く食事をして劇場に戻り席につくとほぼ満席だった。

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この映画は、近田春夫が架空のロック・ミュージカル映画のサントラ盤をイメージして制作したアルバム『星くず兄弟の伝説』(1980年)を原案に、手塚眞監督がSFロック・ミュージカルとして映画化。映画化に伴い追加された曲もあるので映画で使われて曲がすべて近田のアルバムに収録されていないことに注意。なお本当のサントラ盤はCD化されていないとのこと。

星くず兄弟の伝説

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映画では、スターダスト・ブラザーズ(久保田しんご、高木一裕)が、大物プロデューサー(尾崎紀世彦)にスカウトされデビューしあっという間にスターになり栄光を掴むが、その後人気を失い挫折する様子が描かれる。他にもヒロインのマリモ役の戸川京子、大物政治家の息子役にDER ZIBETのISSAYなど、ユニークなキャストが起用された。

映画でいちばん印象に残るのは尾崎紀世彦の貫禄。芝居は素人だろうが、劇中で披露した2曲は圧巻。めちゃくちゃ上手い。これがCD化されていないのは実に残念。また戸川京子の可愛さも今となってはまぶしいばかり。

映画の内容は当時のアイドルシステムを風刺してものとも考えられる。最近騒動になったSMAPの解散問題と某アイドル事務所のことを考えると状況は当時とあまり変わってないのかもしれない。

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上映後、トークショーがあり制作当時の話を聴くことができたのは貴重な体験。そのなかで「出資者はほとんど口を出さなかった」という話があったが、シネセゾンのことだろうか。この映画もセゾン文化の成果のひとつと思うと改めてセゾンの凄さを感じる。

トークショーの終盤、当時スターダスト・ブラザーズを演じた二人が(久保田慎吾高木完)がステージで「星くず兄弟の伝説」歌ってくれて感激した。同時に戸川京子がまりもの曲を歌ってくれたらと思わないわけにはいかなかった。

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映画館からの帰りは甲州街道から西新宿方面まで歩いたが、途中、これを宝塚歌劇団で演じられないだろうかと思った。楽曲も揃っているし結構行けるじゃないかと夢想してみた。

ちなみに、この上映企画は下の書籍の出版記念とのこと。こういう企画ができて人が集まるのだから東京もまだ捨てたものでない。

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