退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ヘイトフル・エイト』(2015) / タランティーノ監督の第"8"作

目黒シネマで映画『ヘイトフル・エイト』(2015年、監督:クエンティン・タランティーノ)を鑑賞。南北戦争(1861 - 1865)終結から数年後のワイオミング州の山中を舞台にする西部劇。猛吹雪の中の家屋に閉じ込められた8人を描く。

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映画は始まると画面がいつもより横長なのに驚く。あとで調べると画面のアスペクト比は 2.76:1 で、Ultra Panavision 70という50-60年代に『ベン・ハー』などの超大作映画で使われた撮影システムを採用していた。贅沢な一本だが、日本には上映施設がすでにない。国内では残念ながら封切りからDCPによる上映だった。アメリカの一部の映画館では70ミリフィルムを使ったさらに長尺のロードショー・バージョンという編集で上映されたとのこと。うらやましい。

正直、目黒シネマの比較的せまいスクリーンにはやはり荷が重すぎる。それでも他の名画座にしなかったのは併映作の『ビリィ・ザ・キッドの新しい夜明け』をどうしても見たかったため。これについては別の記事に書く。

それでも横長のスクリーンを活かした映像は堪能できた。冒頭、エンニオ・モリコーネの劇伴が流れるなか、雪の中を駅馬車が駆けていくシーンだけでもこの映画を観る価値がある。だが屋外のシーンはごくわずかで、尺の大半は室内劇なのはもったいない。せっかく贅沢な撮影システムなのだから、大スペクタクルを撮りたくならなかったのだろうか。


THE HATEFUL EIGHT - Official Trailer - The Weinstein Company

映画の構成はこれまでのタランティーノ作品の文法にどおり、登場人物の会話劇が延々と続き、そのなかから設定が徐々に浮かび上がってくるというもの。もっと英語ができればなといつも思う場面だ。本作ではサミュエル・L・ジャクソンが北軍の軍服を着ているなど、いまだに南北戦争の傷跡がまだ残っているアメリカの縮図が、舞台となった密室のなかに見て取れる。南北戦争について軽く予習して見に行くとよいだろう。

「ヘイトフル・エイト」オリジナル・サウンドトラック

ひと言で言えば、これまで以上にタランティーノらしい映画。ファンは文句なしに楽しめる。ただし容赦なしの残虐描写により映倫からは余裕でR18+指定を受け、さらに上映時間が167分と長尺なため日本での興行成績は厳しかったようだ。

後ろの席の客も上映終了後に、「長かったねぇ」と漏らしていた。長いことを含めてタランティーノ作品だと覚悟していたので、あっという間にだったとは言わないが私自身はそれほどでもなかった。むしろ長い会話劇が従来の作品より洗練されてきた印象を受けた。

これから都内の名画座で次々に上映されるので体調を整えて観に行くべし。

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