退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『黄金のアデーレ 名画の帰還』(2015) / ナチスに奪われたクリムトの名画を取り戻すバディもの

新文芸坐で映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』(2015年、監督:サイモン・カーティス)を鑑賞。アメリカに住む老婦人が、グスタフ・クリムトの名画を法廷闘争の後にオーストリア政府から取り戻した実話に基づくドラマ。第二次世界大戦中にナチスに奪われた「オーストリアのモナリザ」と言われた絵画で、老婦人の叔母がモデルだという。

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90年末代、かつてオーストリアから亡命し、いまはアメリカに暮らすマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)が、戦時中ナチスに奪われ、現在はオーストリア政府が所有するクリムトの名画の返還を勝ち取るストーリー。

彼女とともに立ち上がったのが、駆け出しの弁護士ランドル・シェーンベルクライアン・レイノルズ)。この二人がときには対立しながらも信頼関係を築き目的を達成するのは一種のバディものとも言える。

まず興味を惹いたのは、ナチスが逃れ亡命したマリアの祖国オーストリアへの感情である。返還を求めるためにウィーンに渡るときは飛行機のなかで震えたり、ホテルでは母語であるはずのドイツ語ではなく英語を使うことを選択したり、祖国に対する思いが複雑なことがうかがえる。オーストリア人という前にユダヤ人なのだろうか。

気になったことと言えば、あまり言語の壁を感じなかったこと。オーストリア政府関係者との交渉では英語が使われていたのは腑に落ちない。ホテルではともかく絵画をめぐる交渉ではそれほど寛容ではないだろう。ラストの調停の場におけるマリアの演説も英語だったのも、史実なのか分からないが違和感があった。まあ英語圏の映画なので仕方ないのだろう。

また裁判が決着しウィーンを離れる前に、マリアは戦前に住んでいたアパートメントを訪れるシーンが印象的だった。いまはオフィスとして使われている部屋に入れてももらい、当時を回想する。戦前の映像にいまのマリアが包まれる映像がよかった。下手すると陳腐になりがちな演出だが、この映画のラストでは成功していると言ってよいだろう。


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さて返還要求の対象になったグスタフ・クリムトの名画はどんな絵だったのだろう。《アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I》というタイトルが付いている。映画の冒頭、金箔を使った絵画の制作シーンがあったが、キャンパスの油彩と金箔が施された凝った装飾がされた金ピカの絵である。こんな絵だ。

この類の絵画はナチ時代には退廃的とされたではないかと思っていたが、映画のなかにもそうした描写があった。しかしナチスの将校のなかに目利きがいて略奪された後、幸運にも破棄されずにウィーンの美術館に収蔵される。返還後、一時ロサンゼルスで展示されていたが、後に売却されいまはニューヨークのノイエ・ガレリエが所蔵しているとのこと。一度実物を見てみたいものだ。