退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】内藤篤『円山町瀬戸際日誌―名画座シネマヴェーラ渋谷の10年』(羽鳥書店、2015年)

渋谷・円山町にある名画座シネマヴェーラ渋谷の館長の日誌。2006年1月に開館とのこと。祝10年!

円山町瀬戸際日誌―名画座シネマヴェーラ渋谷の10年

円山町瀬戸際日誌―名画座シネマヴェーラ渋谷の10年

以前、東京大学出版会が発行している冊子『UP』の連載「円山町瀬戸際日誌・渋谷名画座日録抄」を読んでいたので、これに書き下ろしを加えた単行本を見つけたときは、一冊になったのかと驚いた。

私の記憶が正しければ、最初にシネマヴェーラ渋谷に行ったのは「山口百恵特集」のときで、巻末の番組一覧によれば2006年7月のプログラムだ。それ以来、折にふれて通っているので、私自身も10年来の付き合いということになる。

その間にもいくつもの名画座が閉館しているので、生き残っているだけですごいのかもしれない。もっとも法人税は払ったことがないと豪語しているので、経営は順風満帆というわけでもないだろう。本業の弁護士業からの繰り入れがあるのかしらん。

日誌の大半は上映された映画の感想だが、プログラム編成の苦労や興行成績に一喜一憂する様子も大変そうだが興味深い。奥さんにチラシのデザインするようになったと思ったら、いつの間にか奥さんが支配人になっていて「あれあれ」と思ったが、このあたりが長続きの秘訣かもしれない。

余談だが、チラシと言えばフィルムセンターや新文芸坐のようにホームページにチラシをPDFで置いてくれるとうれしい。ゴミになるからなるべくチラシを持ち帰りたくないからだ。

日誌を読んでいると、自分が見に行ったプログラムはついつい引き込まれて読んでしまう。一方、面白いと思っても都合で行けなかったり、あえてスルーしたりしたプログラムでも館主の言を読むと見逃して惜しいことをしたかと思ってしまう。これも一期一会ということか。

なるほどと思ったのは「映画史上の名作」シリーズのこと。なぜ著作権が切れたような古い映画で何度もプログラムを組むのか理解できなったが、今回ようやく腑に落ちた。映画に対する深い愛を感じると同時に自分のストライクゾーンの狭さに恥じ入るばかり。

今後もよろしくお願いします m(_ _)m。

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