退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『風林火山』(1969) / 三船敏郎が演じる軍師・山本勘助

新文芸坐の《脚本家・橋本忍 執念の世界》で、映画『風林火山』(1969年、監督:稲垣浩)を鑑賞。原作は井上靖の同名小説。上映時間165分の長尺作品で途中休憩があり。併映作品はなく一本のみの上映だった。

三船プロダクションの制作で三船敏郎が主役・山本勘助の半生を演じている。さらに武田信玄中村錦之助が、由布姫に佐久間良子が扮しているほか、セリフはないが上杉謙信石原裕次郎が演じてるなど豪華なキャストが光る。

この映画の美点は、勘助、由良姫、信玄らの登場人物の心理描写と人間関係がよく描けていることにある。とくに勘助と由良姫の因縁深い人間関係には引き込まれる。橋本忍の脚本の力だろうか。

とくに行列を抜けだした由良姫を勘助が追いかけて、二人になった場面で由良姫が勘助をポカポカ殴るシーンは最近の萌アニメを先取りしているかのようで面白い。

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一方で肝心の合戦のシーンの映像はさすがに古さを感じさせられる。近年の映像技術の進歩により迫力のあるアクションシーンに慣れて目が肥えてしまったせいだろう。多くの人馬が動員されたのは分かるのだが、現代の観客は物足りなさを感じるのではないか。

いまの時代、この映画でみるべきは銀幕スターたちの演技に尽きる。終始、三船敏郎の芝居で貫かれているので映画の終盤はやや飽きてくるが、それでも天下の三船はかっこいい。スターの看板で集客できた良き時代の映画として見るのがよさそうだ。

余談だが、今回の橋本忍特集でも中居正広版『私は貝になりたい』(2008年)はかからなかった。お蔵入りなのか。

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