退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

女子生徒誘拐事件に対する千葉大学の対応で思ったこと

埼玉県朝霞市の女子中学生が約2年ぶりに保護された事件が世間を騒がせています。今回は事件そのものではなく、容疑者が卒業した千葉大学の対応について考えてみたいと思います。

とりあえず謝罪するスタイル

3月28日に千葉大学は容疑者が身柄確保されたことを受けて、記者会見を開き下のように謝罪しました。 

本学卒業生の未成年誘拐について
掲載日:2016/03/28


このたび,本学工学部の卒業生が,未成年誘拐の容疑で身柄確保されましたことは,誠に遺憾であり,事件の被害者の方・ご家族のみなさまはもとより,世間のみなさまに多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを,心よりお詫び申し上げます。大変に申し訳ございませんでした。


今後,このようなことがないよう学生への指導に努めてまいります。


なお,当該者の処分については,卒業取り消しも含め,今後学内で検討していく予定になっております。


平成28年3月28日
千葉大学長 徳久剛史

まず容疑者が逮捕されていない段階でいきなり謝罪したことに驚きました。推定無罪という言葉を知らないのでしょうか。「とりあえず謝罪するスタイル」ですね。

そもそも事件は大学と直接関係ないのもかかわらず、この件について謝罪する必要があるのかという疑問があります。学生のプライバシーには関知しないというのが大学ではないのでしょうか。学業と素行は別モノでしょう。

大学のコメントには「今後,このようなことがないよう学生への指導に努めてまいります。」とありますが、具体的に「指導」とは何を指すのでしょう。小学校や中学生でもあるまいし、大学職員が親を交えた三者面談や家庭訪問などの生活指導を実施するということですか。到底無理。こうなるともはや大学とは言えません。

できないことは口にしない方がいいかと

遡及して卒業認定及び学位授与の取り消し

その後、容疑者が逮捕されるに至って千葉大学は以下のコメントを発表しました。「容疑者の卒業をいったん取り消して留保することを決めた」という内容です。今後の捜査の進展を踏まえて、正式に処分を判断する方針です。

本学の学生による不祥事への対応について
掲載日:2016/03/31


平成28年3月31日
国立大学法人千葉大学 学長 徳久 剛史


このたび、本学工学部の学生が、未成年者誘拐の容疑で逮捕されたことは、誠に遺憾であり、事件の被害者の方・ご家族のみなさまはもとより、地域のみなさま、世間のみなさまに多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。


現在、本学として、下記のように対応しております。ご報告申し上げます。


3月29日(火)、工学部の教授会において、本学の「学位授与の方針(※1)」では、社会規範の遵守を求めているところ、当該学生の行動は懲戒処分事由(※2)が疑われ再考の必要があるため、一旦、卒業認定及び学位授与を取り消し、卒業を留保することを決定しました。


また、本学は同日、学生懲戒委員会を設置しました。今後は、捜査等のゆくえをまって、当該学生の処分について、検討していく予定です。


なお、千葉大学学則第14条により、「学年は、4月1日に始まり、翌年3月31日に終わる。」とされており、当該学生の大学における学籍は、「3月31日」まで存続しています。
(以下略)

これは事実上のそのまま卒業取り消しになる可能性が高い。学業と学外での素行は別だから卒業取り消しはおかしいと私は考えますが、千葉大学には千葉大学の考えがあるのでしょう。

私がイメージする大学像とはまったく異なります。受刑者が獄内からでも大学の単位や学位が取れてもいいと思うほど大学は開かれた存在であってほしい。

まあ立派なロースクールを抱える大学ですから、容疑者が処分を不服に思い大学を提訴しても十分勝てるという目算があるのでしょうが、器が小さいなと思いました。

まとめ

卒業取り消しの是非は別にして、今回の対応で千葉大学の評判は地に落ちた感があります。ただ「遺憾の念」を表す程度が最上の策だったように思います。ひどい前例をつくったなと印象だけが残りました。

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