退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】立花珠樹『若尾文子〝宿命の女〟なればこそ』(ワイズ出版、2015年)

日本映画の黄金期に大映で活躍した女優・若尾文子(わかお・あやこ)さんのロングインタビューを収録した一冊です。これまでも若尾文子の関連本は何冊か出版されていますが、本書のようなロングインタビューが本になるのは初めてでしょう。若尾さんが「聞かれたことは何でも答えます」と語っているように、聞き手との信頼関係が感じられます。

若尾文子〝宿命の女〟なればこそ

若尾文子〝宿命の女〟なればこそ

五社協定があった時代の日本映画をひとりの女優からの視点で全貌を把握するのは無理があるかもしれません。それでも小津安二郎溝口健二を始めとする巨匠・名匠と呼ばれる監督たちの多くの作品に出演しているので、このインタビューによって当時の日本映画の一面を捉えることには成功したと言っても差し支えないでしょう。たいへん面白く読みました。

若尾さんの「この監督は厳しかった」「この映画は覚えていない」という率直で飾らない言葉の端々に当時の映画界の雰囲気が伺えます。私は大映映画はかなり観てきたつもりですが、まだまだ落ち葉拾いが必要なようです。また映画ファンが好きな作品が、必ずしも出演者が好きなわけではないことも分かりました。当たり前だと言われればそうでしょうが新鮮に感じました。

インタビューの他にもお値段相当に若尾さんの写真が満載です。この点でも期待を裏切りません。スチル写真を見ながら、まだ見ていない映画に思いを馳せるのも一興でしょう。

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