退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『突撃』(1957) / 軍隊組織の不条理や非情さを辛辣に批判した反戦映画

DVDで『突撃』(1957年、監督:スタンリー・キューブリック)を鑑賞する。原題はPaths of Gloryといい、カーク・ダグラス主演している。フランス軍が舞台だが英語劇。

突撃 [DVD]

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ドイツ軍と塹壕戦を戦う第一次世界大戦中のフランス軍は、ドイツ軍の陣地「アリ塚」を攻略するために攻撃を計画する。戦線の連隊を指揮するダックス大佐(カーク・ダグラス)は、この攻撃計画は無謀だと作戦に反対するが師団は取り合わない。

作戦が開始されるとドイツ軍の抵抗は激しく、連隊は前身を阻まれる。師団司令から突撃を命令されるが、苛烈な機銃掃射と砲撃の前にダックス大佐は部下たちに突撃命令を出せずに作戦は失敗に終わる。

帰営後、作戦失敗の責任問題が取り沙汰され、ダックス大佐の連隊は命令不服従の嫌疑をかけられ、見せしめのため各中隊から一人ずつ計3名の兵士を銃殺するため形ばかりの軍事裁判が開かれる。元・弁護士だったダックスは裁判で熱弁を振るい兵士を弁護するが、軍隊組織の理屈が優先され三人の兵士は銃殺刑の判決を受け処刑される。

このように救いようにないストーリーの映画だが、この時期のアメリカ映画には単にスカッとするだけの映画の他にも、あとで観客に考えさせられる映画があったことがわかる。

映像的には当時の塹壕のなかから塹壕戦の様子が描かれているのは興味深い。予算の都合なのか、戦場を俯瞰から戦況を示すような映像はないものの塹壕内の兵士の恐怖がよく捉えられている。

またフランス軍の師団の司令部が置かれている古城が美しいのにも注目したい。前線の苛酷さとの対比が際立っている。この古城の庭で三人の兵士の銃殺刑が執行されるが、その際の式典というか手順に目がいく。師団の兵士たちが見守る目前で、ドラムが鳴り響くなか粛々と銃殺刑の手続きが進んでいく様子は不気味であると同時に、軍隊組織の持つ非情さを際立たせる。

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