退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『暁の挑戦』(1971) / 川崎を舞台にした甦った幻の映画

シネマヴェーラ渋谷の《巨星・橋本忍》で映画『暁の挑戦』(1971年、監督:舛田利雄)を鑑賞する。大正末期の「鶴見騒擾事件(つるみそうじょうじけん)」を題材にした問題作。

長らくフィルムが行方不明だったが、2014年の「川崎市制90周年記念事業」として修復された作品。今回の特集の目玉。なぜこれまで作品が封印されていたのか謎だが、一度は見る価値があるだろう。

中村錦之助若林豪、渡哲也、倍賞美津子仲代達矢といった豪華出演陣を揃えているのはスゴい。このなかでは渡哲也のヒールぶりが際立っている。掛け値なしにカッコいい。

川崎市の「大工業都市建設計画」における工事の利権を独占しようとする渡哲也が率いる地元ヤクザ・酒巻組と衝突して、自ら土建屋を立ち上げた若林豪中村錦之助。この2者の対立が激化し、ついに市民そして軍を巻き込みながら最終決戦に向かうというストーリー。

しかしクライマックスで大乱闘になるかと思いきや、渡哲也が市民が迫ってくるのを見て「時代に負けた」と言って負けを認めてあっさり終了。大乱闘を期待していた観客が肩透かしを食らう。社会派映画なのか娯楽映画なのかはっきりしない映画だった。

今回は映像素材がデジタルだったせいか、スクリーンの上下に黒い帯が残るレターボックスで上映された。それほど気にならないが、スクリーンの横幅は余裕があるのに調整できないものだろうかと思った。単なる技術的な興味です。