退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『幻の湖』(1982) / 愛すべき国産のキング・オブ・カルトムービー

シネマヴェーラ渋谷の《巨星・橋本忍》で映画『幻の湖』(1982年)を鑑賞。橋本忍が原作・脚本・監督を手がけた、今回の橋本忍特集に最も相応しい作品。

幻の湖[東宝DVD名作セレクション]

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愛犬を殺されたジョギング好きのトルコ嬢(南條玲子)が、出刃包丁片手に犯人を追い回す話。途中、戦国時代のパートが挿入されたり、果ては宇宙にまで舞台が移ったりする奇想天外なストーリーが度肝を抜く。

この映画は「東宝創立50周年記念作品」として公開されたが、形而上学的とも言える難解さは観客に理解されず、あっという間に打ち切りになり、その後フィルムは封印され文字通り「幻」になった。しばらくして名画座で時々上映されるようになり、その際は大学の映画サークルなどが詰めかけて大笑いするといういわくつきの映画になってしまった。今世紀になりソフト化されていつでも見ることができるようになり、作品の再評価が進んでいるとかいないとか。

この映画のすごいところは、カルト映画を狙っているのではなくガチで撮っているところ。琵琶湖の四季の風景はすばらしいし、時代劇パートも重厚な演出で手抜きがない。真面目に撮っているのにもかかわらず全編を通してみると、無理な設定と強引なストーリー展開のため、めちゃめちゃな映画になっている。製作者にとっては大失敗だったろうが、そのギャップがいまとなっては貴重。現在の製作委員会のようなシステムからは決して産まれない映画とも言える。

惜しむらくは、今回の上映ではフィルムの褪色がすすみ、風景の映像美が損なわれていたこと。早いうちにDCP化するなど対策をとってほしいところだが、費用を負担する人はいるのだろうか。まあある意味で本作は日本の宝ともいうべきカルト映画なので、保存のために補助金を出してもバチは当たらない。ぜひ今度はキレイな映像で見みたいものだ。

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