退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】矢部宏治『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(集英社インターナショナル 、2014年)

東日本大震災による原発事故以来、基地問題原発問題に共通した何かがあると感じた人は少なくないだろう。どちらも、だれもがおかしいと思いながらも止められない。本書はこうした疑問に対し公文書にあたることで日本の歪んだ現状を戦後史を通して明らかにしていく試みである。

前半は基地と原発の問題をわかりやすく説明している力作で断片的な知識を整理するのに役立つ。後半は自説が多くてやや批判的に読む必要があるだろう。それでもアメリカの勢力を衰えて世界秩序のありかたが変わりつつあるなか、日本が真の独立国になるための指針は示されているように思う。

以下、本書で面白く読んだことをいくつか紹介する。

まずは日本国憲法が定められた経緯は天皇制維持と深く関係しており、「平和憲法」と「天皇制維持」は不可分であること。さらに「沖縄の軍事植民地化」も天皇の意思によるものだという。こうしたことが最新の研究で明らかになってきているとのこと。昭和天皇(とその側近)は一般的なイメージとはちがい胆力があったのは発見だった。

こうした日本独自の天皇制による国家権力構造が、戦前から現在に至るまで行政独裁体制を形成して問題の解決を困難にしている。以下は「あとがき」(p.282)に載っていた権力構造の変遷であるが興味深い。

戦前(昭和前期) 天皇+日本軍+内務官僚
戦後①(昭和後期) 天皇+米軍+財務・経済・外務・法律官僚+自民党
戦後②(平成期) 米軍+外務・法務官僚

もうひとつは、「ドイツの「独立」までの歴史」(p.238)である。割かれている紙面は少ないが、戦後、日本と同じく敗戦国として再出発したドイツがいかに「独立」を勝ち取ったかを紹介している。東西に分割統治され、東西冷戦のなかソ連の脅威を間近に控えて独立までのハードルは日本よりずっと高かったはずだがたいしたものだ。ドイツの近現代史を学ぶことも、今後の日本のありかたを考えるよい材料となりそうだ。

最後にじゃあどうすればいいのか。本書ではフィリピンのように改憲してアメリカとの関係をリセットすることを求めている。つまり「この改正憲法の施行後、外国の軍事基地、軍隊、施設は、国内のいかなる場所においても許可されない」(p.277)という一文を憲法に書き込むことができればゲームセットらしい。

これまで憲法を一言半句変えられなかった日本がこうした大幅な方針転換をできるのか疑問だが、これくらいやらないと現状を打破できないのも事実だろう。

これまでは現状維持で私の世代は逃げきれるかと思っていたが、世界情勢の変化は思いのほか速い。ひょっとしたら歴史の変換点に否が応でも立ちあうことになるかもしれない。

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