退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『競輪上人行状記』(1963) / 小沢昭一の演技が冴える日活喜劇映画

新文芸坐の《追悼 名優・加藤武》で映画『競輪上人行状記』(1963年、監督:西村昭五郎)を鑑賞。寺内大吉の原作を小沢昭一主演で映画化した作品です。日活映画。ポスターはカラーですが白黒映画です。併映の『銭ゲバ』とはちがい、本作はなんとソフト化されていました。

寺の住職の次男・春道(小沢昭一)は坊主を嫌い寺を飛び出し教師をしていたが、兄が急死したたたオンボロ寺を任されることになる。本堂再建のための資金集めに奔走するなか、松戸競輪でビギナーズラックで大穴を当てたことをきっかけに、ノミ屋に手を出すほど競輪にのめり込みんでいく男を小沢が好演しています。

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この映画は見どころは、春道が紆余曲折を経て予想屋として僧侶姿で各地の競輪場を巡る姿が描かれるラストシーンです。「競輪上人」と呼ばれ、ここでタイトル回収。荘厳な劇伴をバックに競輪場でさわやかな口上を披露する小沢昭一の演技は絶品です。一見の価値があります。また兄嫁役の南田洋子の美しさにも要注目です。

さて加藤武は、寺に「仕事」を持ち込む葬儀屋を演じています。小沢と加藤は麻布中学で知り合って以来、芝居の世界で朋友というべき関係だったそうですが、追悼に相応しい映画と言えるでしょう。