退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『異常性愛記録 ハレンチ』(1969) / キング・オブ・変態映画にしてストーカー映画の嚆矢か?

新文芸坐の《戦後70年企画 第四部 戦後日本映画史の発見 愛と官能のシネアスト》なる企画で映画『異常性愛記録 ハレンチ』(1969年、監督:石井輝男)を鑑賞。初見。R-18作品。

自分の欲望にあまりにも忠実に異常な性行為を強要し、かつ常軌を逸した嫉妬深さを持つ深畑(若杉英二)と、彼に追いつめられるヒロイン・典子(橘ますみ)との攻防を描く。オープニング・クレジットから耳の穴や鼻の穴をアップに映す、冒頭から異常性全開のカルト映画。

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深畑は幼児性と暴力をもって典子を支配していたが、紆余曲折の後、典子は誠実な吉岡(吉田輝雄)と一緒になることを決意する。しかし嫉妬深い深畑はそれを許さず、吉岡をナイフで刺殺しようとする。典子が深畑に「ハレンチよ!」と叫ぶ(タイトル回収)。雷雨のなか格闘する二人。突然、ナイフに落雷し深畑は感電死し黒焦げになる。雨のなか典子と吉岡は抱き合うのだった。完。

全編を通して回想シーンが多いので時系列を把握しずらいが、細かいことはどうでもよくなるほど、若杉英二の怪演が冴え渡る。こんな汚れ役をやってその後の俳優としてのキャリアはどうなったのか気になるところ。「ノンコ、愛してるんだよ~ん」という彼の口ぐせが耳に残る。またヒロインの橘ますみも魅力的なのも美点。なお90年代に活躍した同姓同名のAV女優とは別人です。念のため。

この話は石井監督が実話をもとに脚本を書いたというが、「事実は小説よりも奇なり」ということか。当時、ストーカーという語が一般的ではなかっただろうが、本作はストーカー映画の先駆けと言えそうだ。スゴい映画を見た。石井輝男恐るべし。

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