DVDで映画『ブロンテ姉妹』(1979年、監督:アンドレ・テシネ)を鑑賞した。19世紀イギリスの小説家ブロンテ姉妹(シャーロット、エミリー、アン)の伝記小説。史実に充実に描かれているので娯楽性は乏しい。何より英語劇ではなくフランス語劇なのが不思議な印象を与える。原題は、Les Sœurs Brontë(英:The Brontë Sisters)である。
このブロンテ姉妹が活躍したのはビクトリア時代。大英帝国の絶頂期だが、産業革命が豊かさをもたらす一方、労働者からの搾取が社会問題になっていた時代でもある。そうした時代に登場したブロンテ姉妹は、それぞれイギリス文学史に名前を残す小説家になるが、当時は女性に対する差別意識が強く男性名で著書を出版して文壇で話題になった。
ちなみに三人姉妹の代表作は次のとおり。
- シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』 (1847)
- エミリー・ブロンテ『嵐が丘』 (1847)
- アン・ブロンテ『ワイルドフェル・ホールの住人』 (1848)
この三人姉妹には唯一の男兄弟であるブランウェルがいて、家庭教師を務める家の人妻との恋にやぶれて自暴自棄になりアヘン中毒になり衰弱死する事件を起こす。抑揚の少ない映画のなかで強いアクセントになっている。ブランウェルは三人姉妹と自分の4人の肖像画を描いたが、後に自分の部分だけ彼自身により消されている。この絵はよく知られているが、映画のなかでもこのエピソードが取り上げられているで注目したい。肖像画はこちら。
この映画はブランウェルの死後、エミリーとアンが相次いて病死し、結婚したシャーロットがひとり残るところで終わる。その後、史実ではシャーロットも早逝しているのでブロンテ家は途絶えることになる。
全体的にドラマ性とは無縁の地味な映画だが、ヨークシャーの風吹きすさぶ荒野をはじめ屋外撮影の美しさは美点であろう。三姉妹を演じる役者の演技もすばらしい。