嫌韓・嫌中のブームに乗った本はよく見かるが、オーストラリア人気質を取り上げた本は珍しい。書店でタイトルが目にとまったので手にとってみた。この類の新書には内容とは関係なくタイトルに「おバカ」などの強烈な語が踊るのが常のようだ。
「おバカ大国」オーストラリア - だけど幸福度世界1位! 日本20位! (中公新書ラクレ)
- 作者: 沢木サニー祐二
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2015/03/09
- メディア: 新書
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筆者はオーストラリア在住18年で「ニューサウスウェールズ州治安判事」、「国際調停人」などを務めているとのこと。オーストラリア人の国民性を中心に、文化、社会、政治、生活にわたる広い範囲に渡り、遠慮のない筆致でオージーを紹介している。
オージーは、時間は守らず、他人の話は聞かず、自分のことをしゃべりまくり、自分がミスしても謝らないとのこと。そしてトラブル対処法は、「放置」「攻撃」「逃げる」の3つのうちどれかだという。このあたりは元来が流刑地であり、犯罪者の血が引くメンタリティが関係しているなどと言っているが本当だろうか。ちょっと私には馴染めそうにない。
他にはオージーの価値観の中心は「強さ」だといういう指摘は面白い。肉体的な強さも重視されていて、屋外に設置されているフィットネス機器が紹介されていて、「強いとエラい」ということでビルドアップに励むという。強さが高く評価されているので、弱者である高齢者には優しくない社会だというのは意外だった。
また給与水準も高いが物価が高いのも特徴である。それでいて決して勤勉ではなく失業保険で悠々と生活するもの者も多いらしい。これでグローバル経済でやっていけるのかと心配になるが、なんとかなっているようだ。広大な国土、地政学的にも孤立した大陸、豊富な天然資源、人口が国土に比べて少ないことなどが有利に働いている。
さらに英語圏であることも強みだ。歴史的にみても外国からの侵略を受けた経験がなく、周辺国との本格的な紛争を抱えていないことも大きいようだ。
日本人から見るとオーストラリアはかなり雑な国に思えるが、それでもOECDの「より良い暮らしの指標」で1位とのこと。まあこういう調査は、日本では北陸が一位になったりしてアテにならないが、それでも自殺率が高い日本の現状を別の視点から見るのには役に立つかもしれない。
もちろん上で挙げたオーストラリアの特徴は日本にはまったく当てはまらないが、何が幸福なのかを考えるよいきっかけにはなるだろう。