退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『あゝひめゆりの塔 』(1968) / 吉永小百合主演で描く「ひめゆり部隊」の悲劇

シネマヴェーラ渋谷の《デビュー50周年記念 女優・梶芽衣子》という企画で映画『あゝひめゆりの塔』(1968年、監督:舛田利雄)を鑑賞。沖縄戦で玉砕した女子師範学校の生徒(ひめゆり部隊)の悲劇を描いた戦争映画。主演は吉永小百合。白黒映画。

戦闘が始まる前の沖縄の平和な日常がきちんと描かれているのがよい。そのため戦闘が始まった後の悲惨な運命との対比が際立っている。戦争映画であるのと同時に青春映画としても成立している。いろいろな要素を盛り込んであり欲張りな映画だがよくまとまっている。

ただし政治的なメッセージ性は希薄。誰に対して恨みを言うこともなく自決していく生徒たちはすっかり洗脳されている様子。エリートである師範学校の生徒であれば、もっと世の中が見えているはずで、政治体制に対し不満を口にしたり、最終的に米軍に降伏するという選択はなかったのかとも思うが現実はどうだったのだろうか。

映像的には生徒たちが川で水浴びしているときに敵機から機銃掃射を受けて多くの犠牲者が出るシーンが印象的。この場面だけはカラーじゃなくてよかった。

また当時の若者風俗(ゴーゴー?)の場面で本編の前後を挟み込む構成も面白い。渡哲也が観客に向けて話しかける演出も効果的だった。

さて肝心の梶芽衣子(当時:太田雅子)はひめゆり部隊の一人。弱音を吐く先生にビンタ一閃。先生のメガネが吹っ飛び、梶が先生に鋭い目線を送るという見せ場があるので、お見逃しなく。

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