退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】有働由美子『ウドウロク』(新潮社、2014年)

NHKアナウンサーの有働由美子さんのエッセイ集。書きおろし。

本を手にしてデザインを見たとき「黒い本だなぁ」と思ったら、『ウドウロク』というタイトルに理由があった。もちろん「有働録」という意味もあるが、サカサマから読むと「クロウドウ」(黒ウドウ)となる。なるほど上手いタイトルだ。

ウドウロク

ウドウロク

  • 作者:有働 由美子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/10/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

まえがきを読んでいくと、「番組が調子いいからって、調子こいてエッセイか」と思われると、さらっと予防線を張っていて驚いた。まさにそう思っていましたよ。さすがです。これがNHK流の処世術ですかね。

掲載されているエッセイのなかでは、やはりNHKでの仕事が垣間見えるものが面白い。例えば、紅白歌合戦の司会を担当したときの話、そして「あさイチ」で共演しているいのっち(井ノ原快彦)のエピソードだ。仕事ができる人だということもわかる。伊達にNHK女子アナのエースではない。

一方、中年女性を前面に出したエッセイは、同世代の女性からは共感を得るのかもしれないが、おっさんからするとちょっと怖いかも。まあそれを含めて有働さんなのだろうが。

なかに「ほどほどの美貌」というエッセイがあった。有働さんを評して、50代の視聴者からメールにあったお言葉とのこと。この「ほどほどの美貌」というのは女として最強だという。女性からは妬まれず、男性からは大切にされる微妙なバランスが最強らしい。なるほど。

そういえば小島慶子さんもご自身のことを「中途半端な美人」と言っていたので、女子アナ共通の意識なのだろうか。なかなか興味深い。

プライベートのこともずいぶん書いている。見合いの失敗談なども面白いが、亡き母への思いは、自分のことを重ねてしんみりしてしまう。笑いあり涙ありで有働さんの魅力がよく表現されているエッセイ集。よくできています。

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