退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】ヤマザキマリ『国境のない生き方: 私をつくった本と旅』(小学館新書、2014年)

映画にもなったコミック『テルマエ・ロマネ』の作者・ヤマザキマリの半生記。

彼女の作品を読んで、いったいどんな人なのだろうと以前より思っていた。プロフィールによれば、こんな感じでなんかすごそうだ。

マンガ家。1967年東京都出身。1981年、ヨーロッパの一人旅で知り合ったイタリア人の陶芸家に招聘され、1984年に単身でイタリアへ。フィレンツェの美術学校で油絵の勉強を始める。1997年より漫画家として活動。エジプト、シリア、ポルトガル、アメリカを経て、現在は北イタリア・パドヴァ市在住。

この本は、各章の扉で、彼女がある時期に影響を受けた本とその本からの一節を紹介した後で、旅の記憶を紐解いていくという構成で、「旅と本」がキーワードの一冊である。

彼女は早い時期に渡欧してから海外経験が長いので、本書を読む前はどうせ日本語が不自由な人だろうと思っていた。しかし安部公房三島由紀夫などの日本文学から、ラテンアメリカ文学まで読み込んでいたので正直驚いた。膨大な読書体験と、旅の体験に支えられた人生論は奥が深い。

なかでも、〈第3章 欧州ひとり旅〉で安部公房『けものたちは故郷をめざす』を取り上げていたのは衝撃的。14歳でドイツとフランスをひとり旅したときの話だが、中学生が読む本じゃないと思うのが、なんともすごい。

けものたちは故郷をめざす (新潮文庫 あ 4-3)

けものたちは故郷をめざす (新潮文庫 あ 4-3)

それにしても、ひとり旅に送り出す母親も尋常じゃない。「この母にこの娘あり」というところか。著者のようにうまくいくのは稀な例だろうが、子育て世代の親に手に取ってほしい。

後半はやや急ぎ足のきらいがあるが、ヤマザキマリさんのバックグラウンドが少しはわかったような気になった。個人的な興味としては、いかに「言葉の壁」を乗り越えたのかという語学習得術のようなエッセイも読んでみたい。
テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

【関連記事】