退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『君よ憤怒の河を渉れ』(1976) / ずばりカルト映画に認定します

新文芸坐の〈銀幕に刻んだ男の生き様 追悼 高倉健〉で映画『君よ憤怒の河を渉れ』(1976年、佐藤純彌監督)を見てきた。健さんの訃報を聞いたとき、見たいと思った次の3本の映画のうちの1本。

  1. 網走番外地(1965年)
  2. 緋牡丹博徒 花札勝負(1969年)
  3. 君よ憤怒の河を渉れ(1978年)

無実の罪を着せられた現職検事が、刑事の執拗な追跡から逃れつつ自らを陥れた巨悪に復讐する、というストーリー。健さんはもちろん主役の検事役。

ハリソン・フォード主演の『逃亡者』(1993年)を思わせる映画だが、本作はいろいろヒドい。健さんが主演だからまだいいものの、ひとつ間違えばカルト映画と呼ばれてもおかしくない。いや、その域に達しているかも。

着ぐるみの熊に襲われたり、無免許でセスナを操縦したり、新宿で馬が暴走したりと、思い付きをそのまま映像化したようなシーンが続く。最後は黒幕を射殺しても正当防衛が成立するという破天荒さ。劇場では失笑が漏れていた。昔であれば大学の映画研究会がそろって笑いながら見る映画であろう。しかしこれが中国で大ヒットしたというから世の中わからない。

そうは言っても、健さんはカッコいいし、刑事役の原田芳雄のクセのある演技も見応えがある。また牧場主の娘・中野良子健さんに一目惚れして、あっと言う間に愛を誓うようになるのも謎だが、まあ健さんだからと思えば説得力がある。いろいろおかしい映画なののだが、思わず引き込まれる魅力があり長尺だが最後まで見てしまう。

健さんで成立している映画と考えれば、本作は追悼企画に相応しいとも言えるだろう。いろいろ突っ込みたくなる映画なので、誰かといっしょに楽しく観るのをすすめたい。

佐藤純彌監督は、後日、伝説の映画『北京原人 Who are you?』(1997年)を撮っている。本作には、その片鱗がうかがえるというと深読みしすぎだろうか。狙っているのか、それとも真面目に撮ってこうなってしまうのか……。

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