退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

テレビ東京版『永遠の0』は健闘してたがドラマの限界も見えた

テレビ東京開局50周年特別企画として、11日、14日、15日の3夜にわたり放送された大作ドラマ『永遠の0』を見た。主演は向井理。原作は百田尚樹の同名小説。2013年に岡田准一主演で映画化されているので、今回は2度目の映像化になる。

正直テレビドラマ化されると聞いてあまり期待していなかったが、思いのほかよかった。しかし同時にテレビドラマの限界も見えた気がした。

まず最初に指摘したいのは、なぜいまさら『永遠の0』なのかということ。このドラマは、今を生きる姉弟ゼロ戦の搭乗員だった祖父・宮部久蔵についての証言を収集して自らのルーツを探ぐるというストーリーで、謎解きの要素が強い話だ。

にもかかわらず、多くの人がこのドラマをネタバレの状態で見なければならない。そのため謎解きの楽しみが大いにスポイルされている。原作がベストセラーになり、映画も大ヒットしたのでなおさらだ。私自身も原作を読んでいるし、映画も見ている。このドラマは二番煎じなので最初から大変なハンデキャップを負っている。

まずドラマのキャストを見ていこう。宮部久蔵役を向井理が演じている。演技力と言っていいのか分からないが、向井理の醸しだす雰囲気の方が映画版の岡田准一より私の宮部のイメージに近かった。彼の笑顔のせいかもしれないがおもしろいキャスティングだ。しかしあれほど長身のパイロットはいたのだろうか……。

女優陣では宮部の過去を追いかける姉弟の姉役だった広末涼子がよかった。現代劇のせいもあるだろうが、こうした役はさすがにうまい。一方で宮部の妻・松乃役の多部未華子は何かがちがった。とくに、戦後やくざの愛人に身を落とすが、まったく汚れた感じというか苦労を感じさせない。映画版では井上真央が松乃を演じていたが同じことを感じた記憶がある。まあ、この二人は今のところ汚れ役をやりそうにないが。

ドラマは長尺なので映画版では省略されたエピソードも盛り込まれていてうれしい。しかし映画版と同様にラストが原作とちがうのは大いに不満。このドラマを見たひとは、ぜひ小説のラストを確認してほしい。

最近名画座で映画版の予告編を見る機会があった。テレビドラマを映画版と比べるのは酷だろうが、明らかに映像は見劣りする。それでも戦時中の場面の美術や、戦闘シーンの特撮などテレビ画面で見ている限り予想以上の仕上がりだった。健闘しているのではないか。細かいことを言い出すとキリがないが及第点と言っていい。テレ東にしてはよくやった。


ドラマスペシャル 永遠の0 - YouTube

それにしてもテレビドラマは最初からとてつもない重荷を背負っている。予算が少なくや制作期間が短いのはもちろんだが、まずCMで話が切り刻まれる。さらに3夜に渡り放送されるので、あらすじを流した上にそれぞれに見せ場を用意しなくてならない。なかなかキビシイ。

今回、見て損したとは思わないし、むしろ予想以上に面白かった。それでも映画版をもう一度大きなスクリーンで見たくなった。やはり二番煎じはつらい。

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