退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『受験のシンデレラ』(2008) / 力の抜けた受験映画の佳作

映画『受験のシンデレラ』(2008年、監督:和田秀樹)をDVDで鑑賞する。受験指導のカリスマと知られる精神科医和田秀樹の初監督作品。映像特典のインタビューで和田監督は「なんとかお金ができたので、撮りたかった映画を撮れた」と語っているので、実質は氏の自主制作映画であろう。

受験指導のカリスマとして富と名声を手にしていた予備校講師・五十嵐(豊原功補)は、ある日、余命1年半の末期がんと宣告され、残りの期間の生活の質を高める緩和ケアを勧められる。そんななか五十嵐は、貧しい母子家庭で暮らす高校を中退した16歳の少女・真紀(寺島咲)に出会う。彼女の素質を見抜いた彼は失っていた情熱を取り戻し、真紀を東大に合格させることを最後のミッションとして、これまで培ってきた受験ノウハウを彼女に注ぎ込む。

ざっくりこんな話である。テーマとして受験と医療といった監督の専門分野に加えて、格差社会についても切りこんだ意欲作。興行成績を気にする必要がなかったせいか、いい意味で力が抜けているのが奏功している。実際、カネも時間もなかったのかもしれないが。

ラストで真紀は東大文二に合格し、五十嵐は合否を知らずに他界する。これ以外は考えらない予想どおりの結末ではあるが、不思議と嫌味ではない。テレビで東大の合格発表のニュースが流れるなか泣きむせぶ真紀。一瞬、不合格だったかと思わせるが、この涙は死んだ五十嵐に対するものだったいう陳腐な演出も、この映画のなかでは清々しい。

配役ではヒロインの真紀を演じた寺島咲が光っている。利発で素直な少女というイメージにぴったりであるとともに、五十嵐との微妙な距離感をうまく演じている。エンドロールには、その後の真紀の活躍している姿が映されるが、ロングだった髪をショートにしているのがよい。ウィッグだろうけど。マーブルチョコレートにも注目だ。

他には、主題歌の星野みちる「ガンバレ!」が素晴らしいことも付言しておきたいが、音源の入手が困難なのが残念。

明治 マーブル 33g×10個

DVDには映像特典としてメイキング映像が収録されていた。慣れない撮影現場で悪戦苦闘する監督の姿が微笑ましい。周りのスタッフとの関係も気になるが、ちゃんと一本の映画になるのはさすが職人たちというところか。

監督は次回作の構想についてインタビューで語っている。また資金が貯まったら制作するのだろうか。次も見てみたいと思わせる程度には、本作を楽しむことができた。受験生はもちろん、そうでない人も見ておく価値があるだろう。