退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』(幻冬舎、2014年)

「グーグルが予測できない言葉を手に入れよ!」という立派な帯がついていた。ざっくり言うと、「かけがいのない生き方」を生きるには、グーグルの予測を裏切る言葉を手に入るしかない。そのためには環境を変えろ、旅に出ろ、日常にノイズを入れろ、ということか。

弱いつながり 検索ワードを探す旅

弱いつながり 検索ワードを探す旅

この本は、幻冬舎のPR雑誌での語り下ろしに手を加えてたものだ。そのおかげか平易で読みやすい文章になっている。2時間ぐらいで読み終えることができる。著書の著作のなかでは異色な仕上がりで自己啓発書のようなタッチですらある。とくにエッジの効いた内容でもないので従来の読者は物足りないかもしれない。

印象に残ったのは身体が移動すれば検索する言葉も変わる、と繰り返し述べるとともに、自身の旅の体験を語っている点だ。とくに院生時代に特段の準備をせずにアウシュビッツ強制収容所を訪れた話は興味深い。

こうした体験は、著者が提唱する「福島第一原発観光地化計画」にもつながっている。ガチで関わらなくても、観光ぐらいの「弱いつながり」こそが重要であるという。

ボーナストラックとして、「観光客の五つの心得」が載っていた。なるほどと思う。

  1. 無責任を怖れない
  2. 偶然に身をゆだねる
  3. 成功とか失敗とか考えない
  4. ネットには接続しておく
  5. しかし無視する

これを読んで海外に旅に出たいと思うか、部屋でアニメを見ているほうがよいと思うかは読者次第というところか。

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