退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

萩尾望都『ポーの一族』を読みました

少しずつ読み返していた『ポーの一族』を読了しました。1972年から1976年にわたり、主に『別冊少女コミック』に連載されていた萩尾望都による少女漫画です。ほぼ40年前の作品ですが、今後も読み継がれるあろうマスターピースです。いい歳のおっさんが読んでも鑑賞に耐えるだけでも賞賛に値します。

西洋に伝わる吸血鬼(バンパネラ)伝説に題材をとった、少年の姿のまま永遠の時を生きる運命を負った吸血鬼エドガーの物語です。「永遠にこどもであるこどもを描く」という着想から創作されています。大人になれない少年が、18世紀から20世紀まで時間が交錯する舞台で生きるという構成です。

あれこれ説明するまでもなく時代を越える名作ですが、今回読んだ〈萩尾望都Perfect Selection〉という全集が素晴らしかったので紹介します。この全集は全9巻ですが、第6巻、第7巻が『ポーの一族』に割り当てられています。

ポーの一族 I 萩尾望都Perfect Selection 6 (フラワーコミックススペシャル)

ポーの一族 I 萩尾望都Perfect Selection 6 (フラワーコミックススペシャル)

ポーの一族』はコアの本編の他に、いくつかのシリーズ作品で構成されていますが、この本では作品の発表順に収録されているのが美点です。サイズは21x15cmの大判ですし、扉絵などがカラーで再現されているのもすばらしい。

ただ扉絵の挿入位置は改善の余地があります。確認したわけではありませんが、挿入位置が間違っていると思われたり、物語の区切りがわかりにくい部分が見受けられます。また、巻末には作品解説があればさらによいと思いますが、本の価格を考えると仕方ないのかもしれません。それでもこのシリーズを強くオススメします。

最近、文庫版でコレクションしている人や、文庫版を蔵書している図書館すらありますがいただけません。評価が固まっている作家については、豪華本や愛蔵版で揃えてほしいです。とくに図書館においては、何十年も読み継がれることを考えると安いものだと思うのですが……。

余談ですが、『ポーの一族』はいつも参考にしている「21世紀に残したい少女漫画100」にも余裕でランクインしています。少女漫画になじみのない人は、このランキングを参考にして読みすすめていくとよいでしょう。