退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『スパルタの海』(1983) / 幻の映画を見ました

映画『スパルタの海』(1983年、監督:西河克己)をDVDで鑑賞。この映画は戸塚ヨットスクールを取材した、上之郷利昭のノンフィクション『スパルタの海 甦る子供たち』を基に製作された青春映画。1983年に公開が予定されていたが、スクールの問題が刑事事件となり公開が見送られ、長い間お蔵入りしていた作品である。

スパルタの海 [DVD]

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戸塚ヨットスクールと言ってもいまや知らない人もいるだろう。この施設は、1970年代末から1980年代にかけて、スパルタ式の独自の指導により、不登校や引きこもりや家庭内暴力などの数多く非行少年を矯正させていたとされて、一躍当時のマスコミの注目を集めた。しかし、訓練中の生徒が死亡したり、行方不明になったりして「戸塚ヨットスクール事件」として社会問題になる。

問題になったスパルタ式と呼ばれる指導が映画で再現されている。DVDのジャケットには「暴力か!体罰か!」とキャッチコピーが踊っているが、今の基準では完全にアウトだろう。映画にも、過酷な指導のため施設から逃げ出して交番に駆け込む生徒のシーンがある。しかし親の同意を得ているからと施設に連れ戻されるなど、子どもの人権無視の犯罪行為が当時は容認されていたことに驚かされる。

この映画は原作がノンフィクションにもかかわらず、エンターテインメントとしての演出が色濃くされている。ウルフと呼ばれる少年が更生していく過程をを中心にストーリーが進行する。途中、生徒が死亡するなどの事件も挿入されるが、最後はウルフが見事に更生するという感動的なエンディングが用意されている。劇伴も妙に情緒的なのも気になる。もっと第三者的な視点でスクールを追ったほうがよかっただろう。

ノンフィクションっぽく見せたかったのか、登場人物に、いちいち名前、年齢、学歴のテロップが付く例えば、「戸塚宏 ◯歳 名古屋大学機械科卒」という具合だ。謎の演出だが、スタッフたちが意外と高学歴でビックリする。

そして戸塚宏校長を演じているのは伊東四朗。コメディアンとして知られる伊藤であるが、本作の生徒に接するときの厳しい顔というか「悪い顔」は一見の価値がある。なかなかの熱演だ。しかし、さすがにヨットを操船したりする場面はなく、ちょっと物足りない。海に飛び込むシーンもヨットマンとしてはアレアレという感だ。他にはスクールのスタッフの看護師として、山本みどりが出演しているのを発見したのは収穫。美しい。

さて、このDVDの特典映像に戸塚宏本人の舞台挨拶が収録されている。このなかで、実際はもっとひどい体罰を行っていたと吐露している。「ひゃー」といったところだ。そして、舞台挨拶なのに映画そっちのけで自らの教育論をしゃべりまくるのは、相変わらずだ。

この映画は名作とは言えないが、力作であることはまちがいない。上映機会が少いカルト映画というだけでなく、いまだにくすぶり続ける体罰の問題を考え直すよいきっかけになるだろう。

映画「スパルタの海」予告編 - YouTube