退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『しとやかな獣』(1962) / 団地を舞台にした能か狂言か

神保町シアターで、映画『しとやかな獣』(1962年、監督:川島雄三)を鑑賞。〈没後10年 作曲家・池野成の仕事―映画に刻まれた音楽の軌跡〉という企画のなかの一本。

しとやかな獣 [DVD]

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父親の勧めで息子は横領、娘は愛人稼業に励む一家。団地に住むこの強欲一家と、若尾文子が演じる知的な悪女との騙し合いを描く。

舞台は団地の室内に限定される演劇的な映画。能や狂言の形式を取り入れているとさえ言える。半世紀以上も前の映画だが、演出、脚本、音楽などいま見ても斬新なブラックコメディに仕上がっている。

とくに若尾文子の悪女役が秀逸。独特の低い声が役にあっている。劇中、なかなかセリフがないのも計算のうちか。DVDのジャケットにもなっている、モダンなヘアスタイルの若尾の写真は彼女を代表する一枚としていまでもよく目にすることができる。

今回は作曲家・池野成の特集だが、本作の劇伴では能楽囃子と当時流行していたゴーゴーを融合させる実験的な試みを披露している。

ちなみに舞台となった団地はかつての晴海団地で、現在は晴海アイランドトリトンスクエアになっている。公団が造成した団地だが、当時は庶民が入居できないほど高い家賃だったようだ。いま見るとさすがに古い団地の間取りなのだが、当時はあこがれだったらしい。日本は経済不況だと言われるが、それでも当時から比べると裕福になったことがよくわかる。

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