退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

朝ドラ『花子とアン』が終了しました

NHK連続小説『花子とアン』が無事終了しました。モンゴメリ赤毛のアン』を翻訳するなど、明治から昭和の混乱期に翻訳家として活躍した村岡花子の半生をもとにしたテレビドラマでした。

まず脚本が心憎い。ヒロインの花子(吉高由里子)と、小説『赤毛のアン』の主人公アンとを重ね合わせ、随所に『赤毛のアン』を彷彿とさせる場面を散りばめるといった脚色がなさています。石盤で男の子の頭を殴ったり、祖父の口癖が「そうさのう」だったり、『赤毛のアン』を読者を惹きつける、あざとい、否、工夫の凝らされた脚本になっています。中園ミホさん、さすがです。

そしてヒロインを演じるのは吉高由里子。このキャスティングを聞いたとき、吉高にはいまひとつ「華」がないので半年間持つだろうかと心配になりました。しかし中盤、ダブルヒロインともいうべき「腹心の友」である蓮子(仲間由紀恵)が存在が大きく作用し、飽きずに最後まで完走できました。仲間には大物女優の風格さえ感じます。

このドラマでは、花子と関係がない蓮子のモデルである柳原白蓮の「白蓮事件」が大きく取り上げています。花子とともに生きた人たちの生きざまも描いたというと聞こえがいいですが、吉高由里子を押しの弱さを仲間由紀恵で補う狙いでしょう。もはやだれが真のヒロインなのかわからなくなる展開でしたが、この試みは見事に奏功してドラマに厚みが増しました。また白蓮事件のパートのクライマックスで、ナレーションの美輪明宏が歌う「愛の讃歌」がBGMに流れるのは新しい演出でした。

紆余曲折の後、ドラマは『赤毛のアン』の翻訳本がベストセラーになり終盤を迎えます。予想どおりの大団円です。概ね満足しましたが、ちょっと注文もあったので書き留めておきます。

まず、花子が英語が上達するプロセスが省略されているのが不満です。幼少期の花子(山田望叶)が廊下をズサーッと滑ってきて、次の場面では吉高由里子にバトンタッチしているいう演出でした。吉高が花子を演じるようになると、すでに英語が上達していてアレと思いました。当時の女性としては最高の教育を受けていたはずです。どのようなメソッドで英語力を英語を身につけてのか再現してほしかったです。

また醍醐亜矢子(高梨臨)が、吉太郎と結婚して山梨の農家に嫁ぐというのは、どう考えても無理じゃねと思いました。貿易商の家庭に育ち、女学校卒業後も東京で編集者などのキャリアを積んだお嬢様が貧農の嫁が務まるとは思えません。離婚待ったなしです。しかも醍醐さんは、いつまでも年齢不詳の若さを保つという謎設定。どうも納得できません。

それでも半年間、十分に楽しめました。花子さん、ありがとう。

花子とアン メモリアルブック (NHKウイークリーステラ臨時増刊 10月31日号)


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