退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『Let's豪徳寺!』(1987) / 三田寛子主演のアイドル映画にとどまらない秀作

神保町シアターの「麗しき美少女伝説」という企画で、映画『Let's豪徳寺!』(1987年、監督:前田陽一)を鑑賞しました。「麗しき美少女伝説」のなかで、浅丘ルリ子吉永小百合浅丘ルリ子らに並んで、三田寛子後藤久美子の名前があるのは妙な気がしましたが面白い企画です。

Let’s 豪徳寺 [VHS]

Let’s 豪徳寺 [VHS]

  • 発売日: 1991/11/29
  • メディア: VHS

この作品はDVDになっておらず見る機会が貴重なこと、そして当時、三田寛子のライトなファンだったので足を運んでみました。

三田寛子は「花の82年組」のなかの一人。同期デビューには、小泉今日子堀ちえみ松本伊代中森明菜早見優石川秀美などがいて激戦でした。そんななか、はんなりとした京都弁(作戦だったんでしょうね)や天然ボケのキャラクターは私のツボだったので、当時、ちょっと気になる存在でした。いまではすっかり梨園の妻が板についています。

この映画は、庄司陽子の同名コミックの映画化。考古学を専攻する女子大生(三田寛子)が、友人に頼まれてお手伝いとして彼女の家である豪徳寺家でアルバイトすることになります。豪徳寺家の人々と女子大生が織りなす人間模様はいかに、という話です。

豪徳寺家にはヒロインの友人を含めて三姉妹がいて、長女・紺野美沙子、次女・岡安由美子、三女・鈴木保奈美という構成ですが、なかなか豪華です。他にも岸田今日子初井言榮村上弘明らが脇を固めています。

まず特筆すべきは、豪徳寺家の面々の朝食にシーン。各人、別々のものを食べているのですが、それが登場人物の紹介になっていて、同時にどんなキャラクターなのか観客にさりげなく伝えるしくみ。古典的ですがなかなかの手腕です。その後も、三姉妹のエピソードがうまく組み合わせられており映画に厚みがでています。

登場人物では、次女・岡安由美子がよかった。懐かしさからの加点もありますが、幼稚園の先生として子どもと遊ぶ場面は微笑ましいし、同僚の柳沢慎吾(童貞という設定)に迫り、一夜をともにするエピソードも面白い。いま何をしてるのだろうか。

そして女中頭を演じていて初井言榮も脳裏に残ります。この映画では、ストレス発散するために不要になった陶器をゴミ箱に入れて床に叩きつけて喜んでいましたが、さすがに芸達者ですね。彼女はジブリアニメ「天空の城ラピュタ」のドーラ役で知られていますが、他にも多数の映画やテレビドラマに助演していて印象に深い女優ですが、既に亡くなっています。実際の年齢より上の役を演じることが多かったようですが、本当に老成した演技が見られなかったのはいまもって残念です。

さて肝心のヒロイン・三田寛子はどうでしょう。アイドル映画でよくあるように、テーマ曲を歌うのかと思えばそうでもなく、共演者のなかでパッとしません。でも三田寛子の笑顔をスクリーンで見ることができただけでよしとしましょう。

鑑賞前はただのアイドル映画だろうと侮っていましたが、かなりしっかりとした映画に仕上がっています。ノスタルジーを別にしても楽しめるのでないでしょうか。

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