退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『書を捨てよ町へ出よう』(1971)

先日、吉祥寺バウスシアター で『書を捨てよ町へ出よう』(1971)を鑑賞した。寺山修司の長編映画監督デビュー作。劇場のさよなら企画の《さよならバウスシアター、最後の宴》にふさわしい一本。なんとなく中央線沿線に合っている気がする映画である。

この映画を観たのは何十年ぶりだったが、いまでも作り手の強烈なエネルギーを感じる。見どころは冒頭と終盤。とくに主人公がいきなり映画館の観客に語りかける冒頭シーンは印象に残る。

何してんだよ。映画館の暗闇の中で、そうやって腰掛けてたって、何にも始まんないよ。スクリーンはいつでも空っぽなんだよ。

ぜひ一度は映画館のスクリーンで観てほしい作品である。この映画は、主人公の鬱屈した青春を、彼の心象にまかせて描くという複雑な構成である。実験的映像が脈絡なく続くので、ストーリーを追わずに前衛的な映像に身を任せて深く考えないで観るといいだろう。

あと見どころといえば、終盤近くに登場する丸山明宏(現・美輪明宏)であろうか。当時の美輪さんの怪演を見た後で、現在放送中の朝ドラ『花子とアン』のナレーションを楽しむのも一興であろう。

この映画が公開されてから40年。当時、エネルギーに溢れていたニッポンもすっかり少子高齢化により老いてしまった。公開当時に青春を謳歌していた世代、そしてイマドキの若者は、この映画を観てそれぞれ何を思うのだろうか。