退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】小川善照『ノーモア立川明日香』

タレントから新座市市議に当選し、「美人すぎる市議」として話題になった立川明日香。その後、居住実態がないと「市民」から告発され、当選無効になり市議の地位を失う。セミヌードのグラビアがあるので軽薄なタレント本かと思いきや、本人の取材に基づいたまっとうなノンフィクションである。

ノーモア立川明日香

ノーモア立川明日香

メインの小川善照が市議選から辞任に至る一連の騒動を本編として執筆し、グラビアを撮影したカメラマンのインベカヲリ★が児童養護施設で育った立川の生い立ちを本編に挿入されるコラムにまとめている。ふたりの文章が交互に繰り出される構成が奏功している。多くの人に馴染みのないであろう地方自治児童養護施設の実態がわかり、想像以上に面白い。

グラビアに目を移す。一見アマチュアカメラマンの撮影会かと思わせるが、子どもといっしょの写真は、母としての立川を捉えていてなかなかいい。まあ、セミヌードもあるので電車で読むときは注意が必要であるが……。

読み進めていくと、立川が所属していた芸能事務所の社長とは誰なんだろうとか、プロの選挙コンサルタントがついていながら当選無効になるのはどういうことだとか、興味は尽きない。また立川については、女として媚びていないのに、この人脈の引きの強さには驚かされる。その秘訣はどこにあるのだろうといろいろ考えさせられる。

一連の騒動からさらに視野を広げれば、政治家の世襲、選挙の供託金、里親制度、児童養護施設のあり方まで思いを巡らせることすらできる。一読の価値はある。