退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】梅原淳『JR崩壊』

この本は、まずタイトルがおかしい。もっぱらJR北海道で起こした連続事故やその問題点を論じているので、タイトルは『JR北海道崩壊』とするべきだろう。他のJR各社が激怒しそうなだ。キャッチィーなら何でもアリと言わんばかりで読む前から内容に信用が置けるのか疑問に感じてしまう。

内容もすごく読みにくい。もっと分かりやすく書けないのだろうか。数値データが豊富なのはいいが、どの程度の知識をもった読者を対象にしているのかまったく分からない。いきなり素人がこれを読んで分かる人がどれだけいるのだろうか。それとも私がバカなだけなのか。

それでも何とか通読してみた。JR北海道についてわかったことを列挙していてみる。

  1. 千歳線以外は赤字路線である
  2. 乗客輸送密度が低い
  3. 天候などのきびしい自然環境のため輸送コストが高い
  4. 運賃は総括原価方式で決まるが、算定方式がアンフェア(ヤードスティック方式)で運賃を値上げできない
  5. 経営安定資金の運用益でかろうじて経営できているが、リーマンショック以降運用成績が悪化している

ざっくり言うと、北海道での鉄道事業は高コストだが、政府が決めた運賃算定ルールにより適正運賃まで値上げできない。こうした構造上の問題により経営が逼迫し、コスト減の圧力で安全にしわ寄せがきて連続事故を引き起こした、ということらしい。読解力にあまり自信がないがそんなところだろう。

事故の背景には、たしかに単に職員の「心構え」だけでなく、上に示した構造上の問題があるのだろう。だが、いくら経営が苦しくても安全第一を徹底できなかった組織体質はどうなのか。さらに事故が続発する前に、構造を是正して解決を図るという道はなかったのかという疑問には、本書はあまり答えていない。

本書には、JR北海道の「具体的な生き残り策」(あまり具体的ではないが)をいくつか挙げている。そのなかで「上下分離」がいちばん筋がよさそうだ。つまりJR北海道の線路や施設を北海道や沿線の地方自治体が保有し、JR北海道は列車の運転といった営業に特化した鉄道事業者として再生を図るプランである。

まあ、JR北海道の鉄道は道民の足なのだから、他の地域に迷惑がかからないようにお願いしたい。毎朝、満員電車に揺られているのに、北海道のガラガラのローカル線の赤字補填するなんて勘弁してほしいというが都市部で生活する多くの人の本音であろう。