【映画感想】『ペコロスの母に会いに行く』(2013)

新文芸坐で映画『ペコロスの母に会いに行く』(2013)を鑑賞。長崎在住の漫画家・岡野雄一のコミックエッセイを、巨匠・森崎東監督が映画化した話題作。併映は、森崎東監督特集の上映期間だったのに、なぜか『共喰い』（青山真治監督）だった。

テーマは深刻な社会問題になっている介護や認知症。原作者自身の体験をもとに描かれる何気ない日常の風景が心を打つ。深刻に語られることが多いテーマだけに、こんなに簡単じゃないだろうという批判も浴びそうだが、この映画はいたって明るい介護喜劇映画である。

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認知症の母・みつえとバツイチの主人公・ゆういちを、赤木春恵と岩松了が演じている。予告編を観たとき、ハゲチャビンの岩松はどうなのかと思ったが、フツーに映画に馴染んでいた。また重層的に描かれる回想シーンで、ゆういちの幼少期の両親を演じる原田貴和子と加瀬亮もすばらしい。

「ボケることも悪いことばかりじゃなかかもしれん」という、ゆういちのセリフが心に刺さる。高齢者ひとりひとりに、これまで歩いてきた人生があるという当たり前のことを思い起こさせる。

本作は、「キネマ旬報」と「映画芸術」の日本映画ベストテンで第1位を獲得している。評価が相反することが珍しくない両誌で1位を占めたことに驚いた憶えがある。森崎東監督の久しぶりの作品ということに対し加点もあるだろうが、それだけの内容がある映画であろう。既に介護に直面している人、そして予備軍の人にも観ることを勧めたい一本である。

予断だが、原作のコミックエッセイがビジネス誌『週刊ダイヤモンド』の表紙だったことがあり、ビックリしたことがある。これも見に行こうと思った理由のひとつだった。