退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社、2009年)

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

タイトルに惹かれて手にとってみたが、タイトルにある「戦争を選んだ」理由について十分に答えていないと感じた。ちょっと肩透かしをくった気もする。結局、誰にもわからないということか。

それでも日清戦争から太平洋戦争までの日本史を辿りながら、歴史から学ぶアプローチを示唆しているという点では本書を読む意義はある。本書は中高生への講義をもとに執筆された本でありとてもわかりやすい。

その反面、生徒との対話をベースに議論が進んでいくので速読がやりにくい。さらに資料主義というのか、細かい資料がほぼ原文で引用されているのもやや辛いし、そのすぐあとにやさしく書き直してあったのには脱力した。急いでいる読者のための配慮がもう少しほしい。速く読めないとイライラする。

さて、本書でいちばんおもしろかったのは、日中戦争のセクションに登場する胡適(こてき)が唱えた「日本切腹、中国介錯論」である。日中戦争が始まる前に、「アメリカとソ連をこの問題に巻き込むには、中国が日本との戦争をまずは正面から受け入れて、二、三年間、負け続けることだ」と言っている。この提案のとおりに以後の歴史が展開しているわけで、これだけ肝の座った傑物が当時の中国にいたのに驚くばかりである。まあ、その後、中国が共産化するところまでは、誰も予想できなかったようだが……。

また本書のラストで、日本はいまだが先の大戦の責任問題を十分持論しておらず総括をできていないと書いている。「いまさらどうでもいいじゃん」と思う反面で、近現代史をもっときちんと勉強しないといけないという気にもなった。でも忙しい日常では、歴史なんぞはどうしても後回しになってしまう。老後の楽しみにとっておけばいいのかもしれない。