退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

海老原嗣生『「若者はかわいそう」論のウソ』

「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)

「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)

本書は以下のベストセラーを反駁するところから始まるが、筆者の考えがなかなか見えてこない。ややイライラしならが読み進める。

「若者はかわいそう」の裏側で、日本には大きな地殻変動が起きているとする見方には説得力がある。つまり、以下のようなことが起きていると指摘している。

  1. 円高→国内産業の衰退→国内製造業を中心とした不安定な非正規社員の増加
  2. 三次産業の拡大→自営業の衰退→対人折衝業務・大組織での雇用の拡大→引きこもりの増加
  3. ベビーブーマー→大学増加→少子化→大学進学率アップ施策(無試験化)→大学増設継続→大学生余り・大学生の学力低下就職氷河期
  4. 大卒比率アップ→非ホワイトカラー職への志望者減少、人出不足
  5. 大卒比率アップ→ホワイトカラーでも中堅・中小企業は不人気で、人手不足は深刻化

そして今後起きることは:

  • 人口減少→国内消費の減少→内需産業の長期マイナス成長
  • 作りすぎた大学の破綻

やはり大学を増やしたことが大きく影響しているとしている。このあたりは以前読んだ、河本敏浩『名ばかり大学生』にも通じている。

さらに、この問題の処方箋として以下の提案をしている。

  1. 教育安保政策−外国人労働者と海外新市場
  2. 新型正社員=国際標準である「2段階すべり台」社会
  3. 大学を「補習の府」にする
  4. 「公的派遣」という新スキーム

こちらは、ちょっと非現実的だろうと思えるが読み物としてはおもしろい。