退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

佐々木俊尚『ニコニコ動画が未来をつくる ドワンゴ物語』

書名から「ニコニコ動画」が話題の中心かと思いましたが、ニコニコ動画を運営する株式会社ドワンゴの創業から現在に至る社史が書かれています。そのなかでニコニコ動画についても最後の2章を使って紹介されていて、「同期と非同期との狭間に」とうサブタイトルが秀逸です。

冒頭から日本電気PC-9801の時代まで遡り、パソコンゲーム、ゲーム機の通信ゲーム、着メロ、そしてニコニコ動画まで波乱の社史を、IT業界の出来事と重ねて描かれていて、リアルな迫力があります。

そのなかで「廃人」というか「濃い人」たちが出会いを重ねて、ドワンゴが成長していく過程が見事に捉えられておもしろく読むことができました。またIT業界のイベントから、読者自身の経験と重ねる読み方もできるでしょう。

要所で天才プログラマーが華麗に活躍しているのが印象的で、これまでオチャラケた企業イメージを持っていましたが、高い技術力に事業が支えられていることがわかったのも収穫でした。

こうしたサクセスストーリーは読んでいて胸が躍ります。まあ、起業が成功したからこそ、こうして本にも残るのでしょうが。それにしても、いまのように経済不況の時代だからこそ、この本のような若者たちが起業して社会を明るくしてほしいものだ、と無責任に思いました。

ちなみに、ドワンゴという社名は"Dialup Wide Area Networking Gaming Operation"の略で、ダイヤルアップ接続されたネットワークでゲームを運用するといったほどの意味でしょうか。今回、社史を読んで社名の由来に納得しました。