退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

森博嗣『自由をつくる自在に生きる』

自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)

自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)

自由とは何だろう? 自由とは、単に義務がない状態ではなく、何でもしてよい状態でもなく、「自分の思い通りになることだある」と筆者は言う。

自由の獲得こそが人生の目的であるとする筆者が、自由を脅かすさまざまな支配について考察して、支配に対抗して自由を獲得する方法について指針を示す。

読みながら、他者あるいは社会からの支配は、ある意味わかりやすいが、自分自身による支配がいちばんやっかいだよな、とその点は妙に納得がいった。年齢や思い込みなどに縛られずに少しずつでも前進していくことが大事なようだ。

印象に残ったのは、ベストセラー作家である筆者が、商業的な成功を目指して本を書いたと告白していることだ。作家というのは内なる葛藤を吐露しながら創作している、少なくともそうしたフリをするものかと思っていたが、カネのために書いたと潔く認めているのが興味深い。

その一方で、すでに一生分の生活費は稼いだから今後は好きなものを書いていけるともいっている。筆者のことは、著名な小説家であり、押井守作品だから観に行った映画「スカイ・クロラ」の原作者である程度のことしか知らないが、他のエッセイも読んでみたくなった。