退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

福田和也『人間の器量』

人間の器量 (新潮新書)

人間の器量 (新潮新書)

「器量なんて小さくていいから、のんびり暮らしたいよ」と思いながら読み始めた。

戦後、日本人は勉強のできる人、平和を愛する人は育てようとしてきたが、人格を陶冶し、心魂を鍛える事を怠ってきた。なぜ日本人はかくも小粒になったのか―。

さらに「小粒でもいいじゃん」と思いながら読み進めてみると、偉人列伝みたいになって、なんかちょっと期待していたのと違うことに気づく。

日本を代表するような偉人たちと、市井の人とは自ずと求められるものが違うだろう。偉人たちを引き合いにだされても困るばかり。まあ偉人たちのエピソードに触れて博学になるのだろうが、そのことと、読者の人生を豊かにすることと、どのように繋がるのかはわからない。

巻末の「器量人十傑」と現在の政治家や財界人と比べると、確かに小粒になったとは思うが、「それがどうした」とも思う。ちなみに「戦後から今日まで器量人十傑」は以下のとおり。錚々たる顔ぶれだ。これを凡庸な一般人と並べて論じるのは飛躍がありすぎると感じた。

  1. 岸信介
  2. 田中角栄
  3. 小林秀雄
  4. 小泉信三
  5. 山本周五郎
  6. 田島道治
  7. 本田宗一郎
  8. 吉田茂
  9. 宮本常一
  10. 石橋湛山