退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『十三人の刺客』(1963)

先日、新宿バルト9で「十三人の刺客」(1963年、工藤栄一)をみる。東映時代劇まつりの一本。

“集団抗争時代劇”の傑作として知られるが、いわゆる旧来の伝統的時代劇の作風をあちらこちらに残しているところが、却っていい味を出している。宿場町での長い戦闘シーンは斬新なのだが、いまみるとやや冗長に思える。見どころはむしろ戦いに到るまでの虚々実々の駆け引きを描く前半部分にある。同門である片岡千恵蔵内田良平の心の葛藤が心を打つ。

出演者では、片岡千恵蔵の貫禄はもちろん必見だが、暴虐な殿を演じる菅貫太郎が印象的。この映画の隠れた貢献者であろう。

しかし、フィルムの状態がよくなかったのは実に残念。せっかく「東映時代劇まつり」と銘打つのから、ニュープリントとは言わないが、それなりのフィルムを用意してほしいものだ。