退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

西林克彦『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)

よりよく読むには、「わからない」ことよりも、「わかったつもり」でいることの方がはるかに問題だと指摘する。本書では、この「わかったつもり」に至るメカニズムが明らかされ、「わかったつもり」を読者が疑似体験できるのは面白い。

より深く読みたい人には役に立つかもしれない。ただ実務でやりとりされる「仕事文」では、読み手に考えさせたり、誤解を与えるおそれがある文章はよくないとされている。この本では、小学校の教科書からの引用が多いが、読み手に負担を強いる文章がやたらと多い。こうした文書はよほど大事な情報が含まれいない限り、読む価値がないので捨ててもいいのではないだろうか。

学校で、このような文章で学んでいるから、ビジネス文書や論文などで見られる論理的な文章に接する機会が不足しているのではないか。もっと実務に役立つ文章を大量に読みこなす術を教えるべきだろう。

一方で文芸書などは、仔細に拘泥せずに自分なりの解釈で読めれば、それでいいのではないかとも思った。まあ入試の特別なケースではそれでは困るのだろうが、それにはまた別のテクニックがあるだろう。

また文書を作成する立場では、「わかったつもり」という考え方は、読み手に負担をかけずに、書き手の考えを伝えるにはどうするばよいのかを考える場合にも役に立つかもしれない。さらにうがった見方とすれば、読み手を「わかったつもり」にさせる文章を書くことができれば、強力な武器になるのかもしれない。だがそれは、わかりやすい文書を書くよりも相当に難しそうだ。