退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『本日またまた休診なり』(2000)

先週、シネマヴェーラ渋谷で「本日またまた休診なり」(2000年、山城新伍)を観る。今夏、山城新伍の訃報に接してから観たいと思っていたのだが、本作品はソフト化されておらず困っていたが、今回の追悼上映企画でようやく観ることができた。

【映画チラシ】本日またまた休診なり 山城新伍 松坂慶子 [映画チラシ]

山城新伍のエッセイを自ら監督・主演した自伝的な映画。町医師だった父親が主人公。京都の裏町の住民との心温まる交流を通して、魅力的な人間像が描かれる。出演者はかなり豪華で、セットにもお金がかかっていそうだ。いたって真面目な丁寧に撮られた映画である。

主人公の山辺医師が、「人間はそもそも生まれながらに不平等なもんや」と声を荒げるシーンが印象に残る。日々の医療活動のなかで、生まれながらに貧困や差別に苦しんでいる人たちに接しているなか、「人間は平等」という空疎な言葉に対し怒りを表現した場面である。いろいろな人間がいるからこそ、世の中が面白いという思いすら伝わっていくる。

出演者では、山城自身も気合いが入っていて魅力的だが、住み込みの看護婦を演じた小島聖がなかなかいい。ただの肉体派かと思っていたが、こうした演技ができる女優だったとは発見だった。