新文芸坐で「ハゲタカ」(2009年、大友啓史)を観る。2007年に放映されたNHKの土曜ドラマは観ないで映画に臨んだが、やや説明不足で置いてきぼりになった印象を受ける。登場人物の人間関係などを、ドラマを見ていない観客のためにもっと丁寧に描いてほしかった。ドラマを観た後で映画を観るのが正解だろう。
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実際の企業買収は、この映画ほど単純ではないのだろうが、雰囲気はよく出ていて楽しめる。TOBやホワイトナイトといった業界用語が飛び交う映画が、日本でも制作されるようになったことに驚く。それでも、今回映画館は大入りだったが、どれだけの観客が本当にストーリーを理解しているのかは気になった。
ディテールでも気になることがあった。アカマ自動車の新型車が「直噴ディーゼルのハイブリッドGT車」なのだが、いまどきそんな車に乗りたいだろうか。騙された派遣工(高良健吾)が、400万円もらってGTを買うかシーンがあるが、諸経費込みで400万円で買えるのかよという前に、本当に欲しいと思うのかなという疑問が残る。GTというのが映画の重要なポイントだから、演出面から仕方ないのだろうが、車離れということでは、フィクションより現実が先行しているようだ。
ラスト、玉山鉄二が刺殺される。犯人は明らかにされないが、中国ファンドの関与が仄めかされる。リアリティは疑問だが、玉山にとってはオイシイ場面だったろう。全編通して、玉山がカッコよすぎてシビレタ。
タイトルは「ハゲタカ」だが、この映画には、冷徹な守銭奴という意味での「ハゲタカ」は出てこない。みんないいヤツなのだ。そうした生ぬるい設定には、やや引っ掛かるものがあるが、新しい分野を拓いたことに対して、この映画を評価したい。