退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『不毛地帯』(1976)

新文芸坐で「不毛地帯」(1976年、山本薩夫)を観る。「沈まぬ太陽」公開記念の山崎豊子特集。

不毛地帯 [DVD]

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3時間を越える長尺だが、まったく飽きることなく、一気呵成に描かれる「黒い空中戦」は見ごたえ十分。現実の政治経済と重ねて描く社会派作品であると同時に、娯楽作品としても十分に通用する。そうした両立性は特筆できる。

主人公の壱岐(仲代達矢)の長女(秋吉久美子)をして、「自衛隊違憲」「安保反対」と語らしむるのは行きすぎという気もしたが、山本監督らしいといえるだろうか。ほかにも元・大本営参謀の壱岐が「戦争はやってはならない。しかし、やるからには必ず勝たねばならない」などと吐露しているのが印象に残った。こうした強いメッセージが、この映画の肝であろう。

多数の出演者が登場するが、みんな濃い。芸達者の出演者が脇役の人まで役にはまっているのも、この映画の魅力である。とくに防衛庁官房長の小沢栄太郎のイヤミ(sarcastic)はあいかわらず達者なものだ。

ただ中途半端な終わり方なのは気になる。この映画は長尺だが、原作の半分も描いていないらしい。後半がつまらないのか理由は不明だが、大いに気になるところだ。

余談だが、この映画は、どうしても現在放送中のフジテレビのドラマと比べてしまう。上の小沢栄太郎の役は、テレビ版では段田安則が演じているがいかにも軽い。とても官房長になれそうな感じがしない。テレビドラマ版については別の機会に書いてみたい。