退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『柳生一族の陰謀』(1978)

先週、新宿バルト9で「柳生一族の陰謀」(1978年、深作欣二)を観た。「東映時代劇まつり」という企画の一本だが、「東映が12年ぶりに製作した本格時代劇」というキャッチコピーのとおり、上映作品リストのなかで最も時代を下った作品である。

千葉真一が演じる柳生十兵衛が大好きで何度も観た映画ではあるが、展開やセリフをほとんど覚えていたことに自分自身で驚く。あらためて「奇蹟の映画」であることを確認した。もっと評価されてもいい映画だ。

多数の登場人物が次々の登場するが、それを演じる豪華キャストの持ち味を生かし、同時に娯楽大作にまとめ上げた手腕は見事。登場人物が自分の見せ場が終わると、次々に死んでいくのは「仁義なき戦い」的とも言えるが、怒涛のごとく展開するストーリーの力強さはすばらしい。

豪華キャストのなか柳生宗矩を演じる萬屋錦之介の芝居がひときわ大仰で、一人だけ浮いている気がするが、ラストシーンでの驚愕の表情で吐く「ゆ、夢じゃ。これは夢でござる」の名セリフで一気に収斂するのは必見。

この映画を観た後、先日、山城新伍『おこりんぼさびしんぼ』を読んだこともあり、若山富三郎が演じる柳生宗矩千葉真一が演じる柳生十兵衛とが対決する「魔界転生」(1981)を観たくなった。今回の「東映時代劇まつり」の作品リストにないのは残念。