退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

上杉隆『世襲議員のからくり』

世襲議員のからくり (文春新書)

世襲議員のからくり (文春新書)

最近取りざたされている政治家の世襲問題について、その構造および問題点を明らかにしようとする本。

この本を読んで、政治家の世襲による弊害は多いが、最も問題なのは「政治資金管理団体の非課税相続」だと感じた。政治資金規正法がザルなので、実質的に「無罪相続」がまかり通っている実態がある。これは課税対象にするが当然なのだが、当事者である議員自身にできるのだろうか。

また首相であった安倍晋三福田康夫が、なぜ相次いで政権投げ出したのかという問いに、二人とも世襲政治家であり、その生い立ちや経歴に答えを求めているのは非常に面白い。

そして世襲は、単に政治家個人の問題ではなく、後援会を中心とした利権構造となっているのだという。さらに後援会こそが最大の問題だと説く。

また外国との対比において、同じ議員内閣制をとる英国を例にあげている。英国下院議会の世襲率は3パーセント程度と著しく低い。また政党内での候補者選抜プログラムが厳しくて、世襲である意味が薄いのだという。また世襲によるメリットもほとんどないというのも理由である。それでは貴族議会はどうかという疑問はあるが。

まあ結局、議員は国民の負託を受けているのだがから、その結果についても国民が責任を負わなければならない。畢竟、国民の民度に応じた政体しか持ち得ないということだ。

今度の選挙でも世襲議員と目される人たちが出馬している。結果はどうなるか興味のあるところだ