退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

火の鳥(1978年)

シネマヴェーラ渋谷で「火の鳥」(1978年、市川崑)を観る。手塚治虫の名作「火の鳥」の中から、神話時代を舞台にした黎明編を実写化した作品。この作品の存在は知っていたが、どうぜキワモノだろうと思って、いままで見ていなかったのだが、食わず嫌いはよくないと反省した。意外に真っ当な映画だった。

だが映画としての評価はまた別である。まず谷川俊太郎の脚本が、原作に忠実だというのが第一印象だが、それがかえって裏目に出ている。もっと映画向けに大胆に潤色する冒険があって然るべきか。コミックのスケール感をそのまま実写にもってくるのは無理がある。しかも予算の制約からか、実写映像が思いのほか安っぽいのが最後まで気になった。

実写とアニメとの混合も本作品の特徴であるが、両者相容れずに残念な仕上がりである。なんとも薄っぺらくて目を覆いたくなる。狼の踊る『UFO』の意味は? 実験魂だけは評価できるのだが、結果に結びついていないと言わざるとえない。

ただ俳優陣は、女王ヒミコを高峰三枝子が演じるなど、若山富三郎、仲代達矢草刈正雄 、江守徹、林隆三、大原麗子が大挙主演しており、たいへんに豪華である。役者を通して、当時を振り返る分にはいいかもしれない。尾美としのりがナギに扮しているのにも注目したい。これだけの俳優陣をもってしても貧相な実写映像を挽回できないのは惜しい。ハリウッド並みに予算があれば、原作に迫れたのか興味があるところだ。