退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

中川淳一郎『ウェブはバカと暇人のもの』

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

タイトルに惹かれて手に取ったが、読みやすく調子よく読めた。著者は、ニュースサイトに編集者だというが、記事を安易に取り下げるなど、読者に軽々におもねる姿勢に、「ジャーナリストとしての矜持はないのか」とやや憤慨しながら読み進めていった。すると、「ジャーナリズムなんて関係ないもん」という調子だったので、正直ズッコけた。

結局、有象無象をサイトに引き付けてナンボということを生業にしているのだろう。そうした現場を自ら選んでおいて、ターゲットをバカとか暇人とか揶揄しているのだから、あまり笑えない話である。これを自虐的と言い換えてもいいのだろうが、あまり健全とは思えない。筆者が、そうした現状を楽しんでいるのかわからないけど、イヤなら辞めればといいのに――。

第3章に「ネットの時代でもテレビは強い」とあるが、実際の感覚とは随分と違うなと感じた。周囲では、テレビ(とりわけ地上波)をほとんど見られていないし、まったく見ない人すらいる。結局、テレビに影響される人たちというのは、ここで言う「バカと暇人」と呼ばれているセグメントの人たちだけではないのかとも思える。一方、リア充の人たちは、テレビでもケーブルで有料チャンネルを見たり、有料のWebサイトにアクセスしたりして、入手した情報を着々を換金しているという図式なのだろう。まあ、有象無象を対象とするサイトがテレビの影響を大きく受けるというのは、きっと本当なのだろうが。

「バカと暇人」をターゲットとするメディアが不毛であることは想像に難くないが、高所得者である「リア充」向けにネット上でビジネスモデルを構築できないかという、新しい展開にも言及してほしかった。タイトルは、「ウェブはバカと暇人と貧乏人のもの」とするのが、一層センセーショナルで注目を集めたであろう。