- 作者: ニコラス・G・カー,Nicholas Carr,村上彩
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: ハードカバー
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この本は、狭義のクラウド・コンピューティングの細かい技術論ではなく、広い視野で俯瞰的に「クラウド化」を説いているので、ITの専門家ではない人にとっても、今後の社会のあり方を考えさせられる本として興味をもって読むことができる。
Google、Amazon、Salesforce といった企業がフロンティアを拓きつつあるクラウド・コンピューティングがもたらす新しい経済の方向性を説いている。その基盤となるインターネットや情報産業の発展を、電力会社が発展してきた歴史的背景と重ねて語っている点は大変面白い。
こうして発達した情報基盤をワールドコンピュータと呼び、その恩恵を受けて個人はこれまで想像できなかった能力を得た一方で、政府や企業では個人についてこれまで以上に詳細な情報を得て利用できるようになった。しかもそうした状況は心地よいとさえ書いている。インターネット時代以降、個人の自由が強調されるようになったが、これは一時的なもので、富や権力はやがて再び政府・企業に集約されるのだろう。なかなか深い洞察である。
出版されて日が経ったので内容的には古くなった点もあるが、社会的な考察が多く、示唆に富んでおり得るものが多いので、パラダイムシフトは確実に起こっているなかで、読み応えのある一冊である。